エリオット波動って、聞いたことありますよね。
ダウ理論とよく似ているけど、何が違うのか、と思っていませんか?
この記事ではエリオット波動の基礎知識を分かりやすく解説します。これからエリオット波動を学びたいと思っている人はまずは、この記事を読んでみてください。
エリオット波動とは
エリオット波動は、ダウ理論をさらに進化させた優れたチャート分析手法です。もともとは会計士だった株式アナリストのラルフ・ネルソン・エリオット(1871年~1947年)が1934 年ごろに提唱した理論です。
150年ぐらい前、ちょうど明治維新のころに生まれた方が、体系化した理論ですが、当時から現在の形で存在していたわけではなく、後日、フロストなどの別の研究家によって、フィボナッチ数列やフラクタル構造など自然界の法則を説明する数学的根拠を加えて、理論体系化されました。
エリオットはダウ理論の影響を強くうけ、それをベースに75年分の株価インデックスのデータの年足から30分足までを研究し、エリオット波動理論を作ったといわれています。
ダウ理論との違い
エリオット波動のベースとなったダウ理論は基本的には以下のようなものでした。
「トレンドは継続する。高値・安値を切り上げていれば上昇が続く、上昇トレンド。高値・安値を切り下げていれば下降が続く、下降トレンド。それらの条件が崩れたらトレンド転換」といういたってシンプルな理論です。

ダウ理論
ダウ理論の弱点は「予測する」という要素があまり無いことでした。トレンドが転換した後でそれを示すことはできたのですが、「どの辺りでトレンドが転換しそうなのか?」「どのあたりで押しや戻しは終わりそうなのか?」という予測をすることはできなかったのです。
その弱点を解決したのがエリオット波動理論といわれています。
トレーダーにとって、ダウ理論に加えてエリオット波動理論を学ぶことで得られるメリットは次の通りです。
- 今のトレンドがいくつの波動で終わりそうか予測できる
- 押しや戻りがどこで止まりそうか予測できる
- 高値/安値をブレークアウトした後にどこまで進みそうか予測できる
- 一つ上の時間足のトレンドがどちら向きになりそうか予測できる
と、いったところがエリオット波動のメリットになります。
エリオット波動の3つのポイント
エリオット波動には、次の3つの要素があります。重要順な順に、
1.パターン
2.比率
3.時間
波動パターン
エリオット波動におけるパターンというのは、値動きにおける波動が形成されるパターンや形のことです。
トレンド方向への値動きにおける波動のパターンと、トレンドに逆行する値動きにおける波動のパターンにはそれぞれ特徴があります。
その違いを理解できると、今目の前に現れている値動きがトレンド方向に沿っているのか逆行しているのかが分かるようになります。
一つ上の次元のトレンド方向への値動きは5つの波動(波動1~波動5)で構成されます。一方、一つ上の次元のトレンドに逆行する値動きは3つの波動(波動A~波動C)で形成されます。

エリオット基本パターン
上の時間軸のトレンドの方向が上昇トレンドなら、上昇の値動きは5つの波動で形成され、逆行する下降の値動きは3つの波動で構成されます。そして、その上げと下げの合計で8つの波動で一つのサイクルが終わります。
波動はフラクタル
- エリオットが発見したのは、このパターンがすべての時間軸を連結する形でフラクタル(入れ子状態)で繰り返されているということでした。
フラクタルとは自己相似形、ということ。自然界では雲の形、海岸線の形、人体内でも、血管の分岐構造や腸の内壁はフラクタル構造になっているといわれています。

エリオット フラクタル
エリオット波動とは
(図はhttp://www.tradersdaytrading.com/elliott-wave.htmlより)
これはエリオット波動の数え方を解説した図です。
3つの次元のエリオット波動が入れ子状態になっています。
一番大きな次元がローマ数字(Ⅰ、Ⅱ)。
2番目に大きな次元が大括弧[1~5,ABC]
3番目の次元が小括弧(1~5,ABC)で波動のカウントがされています。
よーく目を凝らしてみてください。波動1~波動5、そして波動A~Cの8つの波動が入れ子状態になっているのが分かると思います。
衝撃波(推進波)
一つ上の次元のトレンド方向への波動を衝撃波、もしくは推進波と呼びます。図で言うと波動1、波動3、波動5、波動A、波動Cのことです。
衝撃波を一つ下の時間軸で細かく見ると、低次元の5つの波動(波動1~波動5)で構成されています。
修正波
一つ上のトレンドに逆行する波動を修正波と呼びます。波動2、波動4、波動Bが修正波となります。
修正はの部分を一つ下の時間軸で細かく見ると、低次元の3つの波動(波動A~波動C)で構成されます。
ココが重要なので、下の数行だけは集中して読んでください。
エリオット波動を使ったトレード手法というのは、この修正波から衝撃波に転換する部分でトレンド方向にエントリーを狙うものがほとんどになります。
その転換の判断にダウ理論を使うもよし、プライスアクションシグナルでアグレッシブに狙うもよし、EAを使って狙うもよしです。
フラクタル(入れ子)構造
フラクタル構造はとても重要なのでもう少し解説します。一つ一つの波動を下位足のチャートを使って細かく見るようにすると、そこには同じパターンが入れ子構造になっています。

エリオット波動フラクタル
(↑画像はhttps://www.dolphintrader.com/x-wave-elliot-metatrader-4-indicator/より)
この入れ子構造はフラクタル(自己相似形)と呼ばれ、現在のマルチタイムフレーム分析のベースとなっています。月足から1分足まで、この同じ波形が繰り返されているのです。
この画像の濃い青の波動にまず注目してください。波動5までが上昇トレンド。それ以降の波動A~波動Cは下降トレンドです。
次に水色の次元の波動を見てください。上の次元(濃い青)が上昇トレンドの間は、上昇の方向に水色の波動が5つの波動になり、下降の方向には波動A~波動Cの3波になっています。
濃い青のトレンドが下降トレンドになると、今度は下降の方向に水色の波動1~波動5が出て、逆行する上昇が波動A~波動Cの3波になります。
濃い青の波動よりもさらに上の次元のトレンドが上昇トレンドであれば、濃い青の波動ABCの次は、また波動1~5と同じパターンが連結していくことが想定されます。

エリオット波動 フラクタル 連結
一方、濃い青の波動C直後の連結部分で水色の波動が以下のように波動ABCと出てさらに下げていくなら、濃い青よりも上の時間軸が下降トレンドに転換していく兆候になります。エリオット波動の変化の兆候

濃い青の波動A~波動Cの3波で終わって上昇に転じると思っていたのに、実際には波動A~波動Cではなく、下方向への波動1~波動5だったということになります。
重要なことは、この連結直後の下位の波動が波動1~波動5で上げるか、波動A~波動Cの3波で終わるかによってある程度その後の展開が予測できるということです。
この連結部分の下位足の波動から上の時間軸のトレンドの変化の兆候を突き止めることができるのも、エリオット波動理論の優れているポイントです。
濃い青の次元が上昇トレンドの間は上昇トレンドなので、トレンド方向に沿った波動1/波動3/波動5は、さらに小さな5つの波動が含まれていることに注目してください。
フィボナッチ
現代のエリオット理論の確立にはA.Jフロスト(AJ Frost)とロバート.R.プロクター(Robert Rougelot Prechter)に依るところが大きい。彼らは波の特徴を解明し、Fibonacci級数を波の振幅に当てはめて計算することで、この理論を体系付けた。
トレードを実践するとき、押し目や戻しの値動き、またはブレークアウトの後の値動きがどこで止まりそうなのかをあらかじめ予測できることは大きなアドバンテージになります。エリオット波動ではそれができます。
波動の値幅の比率はフィボナッチ数になるというのがエリオット波動理論の主張です。そしてそれは驚くほどよく当たります。
例えば、波動4は波動3の38.2%~61.8%戻した位置で止まりやすいと言われています。
であれば、波動5を取りたいなら、波動4が終わりやすい価格帯まで引き付けてエントリーすればよいではないか。というのがエリオット波動の代表的な手法です。
各波動により異なる比率のルールが存在しますので、それに従ってエントリーポイントや利食い目標を設定してトレードするのがエリオット波動の王道の使い方です。
波動が機能する時間
波動の数の関係、波動の(値動きの)長さの比率がフィボナッチ数になるというのがエリオット波動理論の特徴です。
それだけではなく、値動きが継続する時間の比率もフィボナッチ数になると言われています。
高値から高値の日数、安値から安値の日数、高値から安値の日数、安値から高値の日数がフィボナッチの比率になるというのです。
ただ、時間に関しては、実際あまり信憑性が無いと言われています。
ですので実際のトレードに使われることは少ないようです。
みな、ほかのテクニカルと組みあわせて、自分のアレンジをいれて、使っているのではないでしょうか。
AIが、1秒間に4000回も注文を入れるハイフリクエンシートレードの世界までを100年以上前の理論がカバーしているといったら、むしろ嘘くさいですよね。
エリオット波動が機能する理由は、市場参加者の群集心理です。悲観的な心理から楽観的な心理への変化のなかで群衆がどのようにふるまうか?というのには法則があり、その結果としての値動きやその波動の数はフィボナッチ数の比率になりやすいということです。
相場参加者が少なく群集心理が働きにくい小さな市場やAIばかりがトレードしている市場では、エリオット波動の通りの値動きになることを期待することはできません。
エリオット波動が最もよく機能すると言われているのは以下のような巨大な市場です。
- 株価インデックス
- FX
- 金
- 原油
- 大型株
以上のように、とてつもなくたくさんの人が参加している市場では群集心理が法則のように働くのでエリオット波動が機能しやすいと言われています。
AIによるHTFの台頭で、エリオットの効きが低くなっているのはみな実感しているところだと思います。
日々のトレード検証にエリオットは機能していたのか、など加えてみると、自分アレンジのエリオットが出来上がるかもしれません。自分にとっての鉄板エリオットを探すというモチベーションを持てば。過去検証も楽しくできるかも、です。
いかがでしょうか。
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